タンパク質は、髪の毛のハリやコシ、ツヤなどを作り出す重要な役割を担っています。髪の毛の主成分は、ケラチンと呼ばれるタンパク質です。ケラチンは、タンパク質をしっかり摂取することで生成が促進されます。
しかし、タンパク質を闇雲に摂取すればよいのではなく、髪質の向上に適したタンパク質の種類や摂取のタイミングを知る必要があります。
本記事では、髪の毛に対するタンパク質の重要性や効率的な摂取方法について解説します。ハリ・コシのある元気な髪の毛を目指したい方は、ぜひ参考にしてください。
【事前知識】髪の毛の健康に大切なタンパク質の特徴を知ろう
タンパク質は、髪の毛だけでなく健康的な身体に欠かせない栄養素です。以下のようにさまざまな特徴があります。
- 髪の毛の99%はケラチンというタンパク質で構成されている
- 体内で合成できないため食事から摂取する必要がある
- タンパク質は成人の体組成の約16%を占める
- アミノ酸スコア*が100に近いほど体内で有効活用される
タンパク質の特徴を知ることで、効率的に健康的な髪の毛を目指せます。
*食品に含まれる「必須アミノ酸のバランス」を評価したものをアミノ酸スコアと言います。100点満点で評価され、卵や肉、魚、牛乳などがアミノ酸スコア100の食品です。
参考:たんぱく質‐アミノ酸 | ハイパフォーマンススポーツセンター
必要なアミノ酸をバランスよく摂取することが大切
髪の毛は、食事から摂取したタンパク質より作られます。タンパク質は20種のアミノ酸の集合体です。
髪の毛に多く含まれているアミノ酸はシスチンやグルタミン酸ですが、これらのみを摂取しても健康的な髪の毛は育ちません。
アミノ酸は、バランス良く摂取することで体内で効率的に利用され、良質なタンパク質(髪の毛)になります。アミノ酸のバランスを数値化したものが、アミノ酸スコアです。
グリシンやロイシンといった必須アミノ酸をはじめとした複数のアミノ酸をバランス良く摂取することで、健康的な髪の毛を目指せます。
年齢とともにタンパク質の吸収力は衰える
食事から摂取したタンパク質は、一度消化器官でアミノ酸に分解されます。タンパク質のままだと分子が大きく、うまく吸収できないためです。一度分解された後、再びタンパク質として合成されます。
年齢が上がると、タンパク質を合成する力が弱ります。そのため、肌のシワや髪のツヤに影響が出るのです。バランスのとれたアミノ酸が含まれたタンパク質をしっかり摂取することで、合成の効率を上げられます。
タンパク質の摂取が髪の毛に与える効果
タンパク質は、髪の毛に不可欠な栄養素です。髪の毛の成長だけでなく、以下のようにさまざまな好影響を与えます。
- 髪の毛の成長を助ける
- 髪の毛のダメージを修復する
- 髪の毛にツヤ・コシを与える
- 水分保持能力を向上させる
タンパク質には、髪の毛の成長をサポートする効果が期待できます。発毛効果があるわけではありませんが、ハリ・コシのある健康的な髪の毛を作るために欠かせない栄養素です。
また、タンパク質をしっかり摂取することで髪の毛の水分保持力が高まります。その結果、枝毛や切れ毛の少ないツヤのある髪の毛を目指せます。
タンパク質は摂取すれば何でもいいわけではない
健康的な髪の毛を目指すためとはいえ、闇雲にタンパク質を摂取することはやめましょう。摂取するタンパク質の量や他の栄養素との組み合わせによって、髪の毛に与える影響が異なると言われています。
厚生労働省のデータによると、一日のタンパク質の推奨摂取量は18歳以上の男性が60g、女性が一日50gです。不足だけでなく、過剰摂取にも注意しましょう。また、脂質が多いタンパク質を多く摂取すると、髪の毛のツヤが失われやすいともいわれています。
タンパク質と合わせて、亜鉛をはじめとしたミネラルやビタミン類を摂取することもおすすめです。これらを一緒に摂取することで、髪の毛の合成が促進されやすくなります。
髪の毛の健康に必要なタンパク質を効率よく摂れる食べ物
タンパク質をしっかり摂取することで、健康的な髪の毛を目指せます。中でも以下の4つの食べ物は、髪の毛に必要なタンパク質を効率よく摂取できるためおすすめです。
- 魚介類
- レバー
- 大豆製品・ナッツ類
- プロテイン
魚介類
魚介類には、髪の毛に良いとされる栄養素が豊富に含まれています。例えば、タンパク質やDHA、EPA、鉄などです。DHAやEPAには、頭皮の炎症を抑える作用があるため、抜け毛予防につながります。
魚はアミノ酸スコアが100なので、必須アミノ酸のバランスが抜群です。アミノ酸スコア100のタンパク質は、健康的な髪の毛の維持に適しています。また、肉や卵、豆などと比べると、全体的な栄養バランスも優れている優秀なタンパク質です。
レバー
レバーは、タンパク質や鉄、亜鉛、ビタミンB群が豊富です。亜鉛にはケラチンのはたらきを助ける作用があるため、髪の毛を健康な状態に近づけてくれます。
レバーにはビタミンAも豊富です。ビタミンAには頭皮環境を整え、髪の毛の成長を促す作用が期待できます。
しかし、ビタミンAは過剰摂取すると健康上のリスクがあるため注意が必要です。過剰に摂取してしまうと、頭痛や吐き気が生じる可能性があります。レバーを食べる頻度は、週に1回程度がおすすめです。
大豆製品・ナッツ類
大豆には、良質な植物性タンパク質が含まれています。肉や魚よりも脂質が控えめなので、脂質の過剰摂取を抑えられる優れものです。
また、大豆特有の成分であるイソフラボンは女性ホルモンと似たはたらきを持っており、薄毛の予防に役立つとされています。大豆からは、髪の成長を促す作用がある鉄・亜鉛なども摂取が可能です。
ナッツ類には、タンパク質以外にも亜鉛やビタミンEが豊富です。さらに、くるみに多く含まれるn-3系脂肪酸の1種であるα-リノレン酸には、頭皮や髪の毛を保湿するはたらきがあります。
プロテイン
プロテインを活用して、健康的な髪の毛を目指すこともおすすめです。プロテインには、以下のようにさまざまな種類や特徴があります。
種類 | 原材料 | 特徴 |
ホエイプロテイン | 牛乳由来のタンパク質 | 栄養が豊富で吸収が速い |
ソイプロテイン | 大豆由来のタンパク質 | 脂質が低い |
カゼインプロテイン | 牛乳由来のタンパク質 | 消化吸収が緩やかで満足感がある |
エッグプロテイン | 卵由来のタンパク質 | 脂質が低く乳糖を含んでいない |
プロテインは、多くのものが動物性です。しかし、最近は植物性の商品も増えています。大豆だけでなく、えんどう豆(ピープロテイン)や小麦で作られているものも健康的な髪の毛の育成に有効です。動物性の食品を控えている方でも、安心してプロテインを摂取できます。
タンパク質は、髪の毛よりも筋肉へ優先的に使われます。そのため、筋トレをされている方は、特にプロテインでタンパク質をしっかり摂取することをおすすめします。
補足|タンパク質と一緒に摂りたい栄養素もある
タンパク質と一緒に摂取することで、髪の成長がさらに促進される栄養素があります。
栄養素 | 効果 | 食べ物 |
亜鉛 | タンパク質をケラチンへ合成する | ・牡蠣 ・豚レバー ・牛赤身肉 ・小麦胚芽 |
ビタミンD | ケラチンを作り、髪の毛の成長を促進する | ・鮭 ・さんま ・きくらげ ・しいたけ |
ビタミンA | 頭皮環境を整え、髪の毛の成長を促進する | ・レバー ・バター ・卵黄 ・にんじん |
タンパク質単体で摂取しても、うまく髪の毛に合成されません。タンパク質以外の栄養バランスも意識した食事を心がけましょう。
髪の毛のために適したタンパク質の摂取タイミングは?
タンパク質を効率的に摂取して、健康的な髪の毛を目指すためには、摂取のタイミングを意識することも大切です。おすすめの摂取タイミングは、以下の4つです。
- 起床した直後
- 激しい運動の直後
- 空腹を感じたとき
- 就寝の30分〜1時間前
特に、朝と夜は要チェックです。朝は、体の中の水分や栄養素が不足している状態です。そのタイミングでタンパク質を摂取することで、効率的に吸収されます。
夜は、成長ホルモンが分泌される時間帯です。そのため、寝る前にタンパク質を摂取することで、効率的に健康的な髪の毛を目指せます。
プロテインやナッツ類であれば、気軽に好きなタイミングでタンパク質を摂取できるためおすすめです。
タンパク質が不足することで髪の毛に及ぼす影響
タンパク質は、髪の毛にとって重要な栄養素です。髪の毛の99%はケラチンというタンパク質で構成されています。
タンパク質が不足すると、髪の毛の成長が遅れたり頭皮環境が乱れたりします。それは、タンパク質が体内で利用される場所に優先順位があるためです。
タンパク質は、内臓や血液、ホルモン、骨など生命活動に欠かせない部分に優先的に使われます。その後、余った分が筋肉や肌、髪の毛へ分配されるのです。そのため、タンパク質の摂取量が足りないと髪の毛まで栄養が行き渡りません。
直近10年の国民健康・栄養調査によると、日本人のタンパク質の摂取量は増えていますが、髪の毛の健康的な成長のためにも、意識的に摂取することが大切です。
髪の毛の健康のためタンパク質を摂る際に気を付けること
健康的な髪の毛を目指すためには、タンパク質の摂取が欠かせません。しかし、注意点もあります。
- 高カロリー・脂っこい食事は避ける
- 多量の間食を避ける
- 砂糖の多い(甘い)物の摂りすぎは避ける
高カロリー・脂っこい食事は避ける
肥満は、脱毛のリスクを高める要因の一つです。脂質が多い食事は、肥満の原因となります。また、毛包に脂肪が蓄積し、髪の毛を薄くするリスクもあります。
健康的な髪の毛を目指したい方は、脂質を取りすぎないよう気を付けましょう。特に、唐揚げやとんかつなどの揚げ物は、タンパク質以上に脂質が高いため要注意です。
多量の間食を避ける
間食は、砂糖の過剰摂取につながる可能性があるため、注意が必要です。1日の間食は、200kcal以内に抑えることをおすすめします。
どうしても何かを食べたい時は、間食をナッツ類に置き換えるのがおすすめです。ナッツに置き換えることで、砂糖の摂取量が減り、髪の毛に必要なタンパク質やビタミン類を摂取できます。
また、間食は日中のみがおすすめです。夕食後の間食は体脂肪が蓄積しやすいため、肥満や脱毛のリスクを高める原因となります。
砂糖の多い(甘い)物の摂りすぎは避ける
砂糖の過剰摂取はインスリン*の効果を悪化させ、抜け毛のリスクを高めるため注意が必要です。
お菓子はもちろんのこと、飲み物も要注意です。炭酸飲料やジュース、スポーツドリンク、加糖コーヒーなどには、砂糖がたくさん含まれています。薄毛予防のために、飲み過ぎには注意しましょう。
*インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンの一種です。血糖値を一定に保つ働きを持っています。また、髪の毛の成長因子であるインスリン様成長因子(IGF-1)の生成にも深く関わっています。
参考:The Association between Sugar-Sweetened Beverages and Male Pattern Hair Loss in Young Men
髪の毛の健康に効く良質なタンパク質を多く摂ろう
健康的な髪の毛には、タンパク質が必要不可欠です。しかし、闇雲にタンパク質を摂取すればいいわけではありません。摂取のタイミングや食べ物の種類によっては、効率が悪かったり脂質が多かったりする可能性があります。
効率よく髪の毛を育てるためには、タンパク質の摂り方やタイミングも重要です。まずは正しい知識を身に付け、できることからチャレンジしてください。そして、ハリ・コシ・ツヤのある健康的で若々しい髪の毛を目指しましょう。