植毛は、薄毛が気になる部分に自分の髪の毛や人工毛を移植する施術です。薄毛が気になる部分をカバーできるので、薄毛に悩む方には植毛を検討する方も多いです。

しかし、植毛には高額な費用や外科手術を伴うなど、デメリットも存在します。また、施術後の生活習慣やヘアケアによって、薄毛が再発する可能性があるため注意が必要です。

本記事では、植毛の効果やメリット・デメリットについて解説します。植毛を検討している方は、注意点も含めて施術を受けるかを検討しましょう。

そもそも植毛とは？育毛・発毛・増毛との違いを解説

植毛とは、薄毛が気になる部分の頭皮に毛髪組織を直接植え付ける施術です。薄毛部分に自分の髪の毛や人工毛を直接移植するために外科手術を伴います。

投薬による薄毛治療は服用をやめると状態が元に戻るリスクがありますが、植毛では一度の施術で効果の持続が期待できる点が特徴です。

植毛に関して、育毛・発毛・増毛との違いを確認しておきましょう。

種別	概要
植毛	自分の髪の毛や人工毛を薄毛の部分に移植する 一度の施術で効果の持続が期待できる
育毛	すでに生えている髪の毛が健康に育つためにケアする 頭皮の保湿や血行促進、頭皮マッサージなどを行う
発毛	投薬によって新しく髪の毛を生やす 髪の毛ではなく、毛根に直接アプローチする
増毛	すでに生えている髪の毛に人毛や人工毛を装着する 施術後すぐに髪の毛のボリュームを増やせる

植毛の種類の中でも「自毛植毛」が主流

植毛には「自毛植毛」と「人工毛植毛」の2種類があります。

自毛植毛は後頭部など健康な髪の毛が生えている部分から毛髪組織を採取して、薄毛が気になる部分に移植する施術です。施術後に生着すれば、髪の毛をカットしても再び伸び始めます。

一方、人工毛植毛は自分の髪の毛ではなく、合成繊維で作られた人工毛を移植する施術です。異物を頭皮に移植するため、拒絶反応や感染症などのリスクがあります。

人工毛植毛は過去に多くの有害事象の報告があり、アメリカの食品医薬品局（FDA）では禁止されています。また、日本で人工毛植毛は禁止されていないものの、有害事象の発生を懸念して日本皮膚科学会のガイドラインでは推奨されていません。

参考

CFR – Code of Federal Regulations Title 21｜FDA

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン

自毛植毛はやめたほうがいい？デメリットを紹介

自毛植毛は薄毛が気になる部分をカバーできますが、デメリットも存在します。施術を検討している方は、デメリットを把握しておきましょう。

• 他の薄毛治療・改善方法に比べて初期費用が高くなりやすい
• 後頭部の髪の毛を刈り上げて見た目に影響が出ることがある
• 髪の毛・頭皮の状態によって生着率が落ちることがある
• 仕上がりは施術者の技量によって異なる
• 施術後にダウンタイムがある・痛みや傷が残る場合がある

他の薄毛治療・改善方法に比べて初期費用が高くなりやすい

自毛植毛では外科手術を伴うため、1回にかかる費用が高額になりやすいです。費用の相場は治療方法・移植するグラフト（株）数・グラフトあたりの値段で決まり、約20万～30万円が相場といえます。

自毛植毛の費用が高額になるのは公的医療保険が適用されない自由診療であり、全額が自己負担になるからです。

他の薄毛治療や改善方法と比べてみると、初期費用が高いとわかります。

• 自毛植毛：約200,000～300,000円
• 育毛剤：約2,500～15,000円
• 発毛剤：約4,000～30,000円

ただし、自毛植毛では他の薄毛治療のように定期的なメンテナンスが必要ありません。一度の施術で効果が持続し、トータルの費用を抑えられる可能性もあります。

後頭部の髪の毛を刈り上げて見た目に影響が出ることがある

自毛植毛では、毛髪組織を採取するために後頭部の髪の毛を刈り上げます。一時的に髪の毛が短くなり、見た目に影響が出る点がデメリットです。

ほとんどの植毛方法で、一定期間はカバーシートや帽子の着用が必要になります。そのため、人前に出る機会が多い方は、見た目が気になって植毛の施術をためらうかもしれません。

しかし、近年は刈り上げずに植毛できる方法も開発されています。植毛後の状態が気になる方も、まずは専門家に相談してみるのが良いでしょう。

髪の毛・頭皮の状態によって生着率が落ちることがある

自毛植毛では、髪の毛や頭皮の状態によって生着率が落ちます。移植したすべての髪の毛が生着するわけではない点には注意が必要です。

自毛植毛における一般的な生着率は約82.5％です。例えば、100株を移植した場合、生着する髪の毛は80本程度となります。薄毛がかなり深刻な場合や、移植する髪の毛が健康的ではない場合は生着しない可能性もあります。

移植した髪の毛が生着するかには、術後の過ごし方も重要です。手術当日は髪の毛を洗わず、術後しばらくは頭皮に刺激を与えないように気を付けてください。

仕上がりは施術者の技量によって異なる

自毛植毛の仕上がりは、施術者の技量によって異なります。そのため、施術者の実績を見極めて施術を任せないと、移植した髪の毛が生着しないことがあります。

髪の毛の生着率や生え変わりの改善効果は技量が左右するため、クリニックや施術者の選び方が重要です。

信頼できるクリニックや施術者を選ぶには、症例数が豊富であるかを確認してください。また、クリニックの雰囲気や施術者の人柄も含めて、相性が合うかを見極める必要があります。

多くのクリニックでは無料カウンセリングを実施しているので、まずは相談して相性を確かめましょう。

施術後にダウンタイムがある・痛みや傷が残る場合がある

自毛植毛では施術後にダウンタイムがあり、痛みや傷が残る可能性があるのもデメリットです。

特に従来型のFUSS式ではメスを使って毛髪組織を採取するため、術後に長めのダウンタイムが必要になります。また、頭皮を切り取った部分には縫合が必要であり、施術部分が傷として残る可能性があります。

この他には額やまぶたの腫れ、傷口のかゆみなどの症状が出る可能性もあります。

術後のダウンタイムや傷跡を軽減するには、FUE式の自毛植毛を選ぶのがおすすめです。メスを使わない施術のため痛みを軽減し、傷も残りにくいです。

自毛植毛で薄毛改善に見込める効果・メリット

自毛植毛に見込まれる薄毛改善の効果・メリットを理解しておきましょう。

• 健康的な毛を移植するので薄毛部分でも生え変わりが正常化する
• 髪の毛が生えていない箇所の発毛も見込める
• 自身の髪の毛由来なので拒絶反応が起こりにくい
• 生着後は元の髪の毛と同じようにヘアアレンジ・ケアを行える
• 移植後のメンテナンス・通院が不要

健康的な毛を移植するので薄毛部分でも生え変わりが正常化する

自毛植毛では健康的な髪の毛を移植するため、薄毛部分でも生え変わりが正常化します。これは、薄毛の影響を受けにくい後頭部の髪の毛を移植することで、毛周期が正常な状態に整うからです。

通常、投薬治療では毛根が死滅して薄毛になった部分から、新しい髪の毛が生えることはありません。また、毛根が残っていても、元通りの状態まで回復させるのは難しいでしょう。

しかし、自毛植毛であれば移植した髪の毛が生着することで、自然に抜け落ちた後も新しい髪の毛に生え変わります。投薬治療で効果を実感できない場合は、自毛植毛を検討してみるのが良いでしょう。

髪の毛が生えていない箇所の発毛も見込める

自毛植毛は、薄毛が気になる部分に後頭部などの健康な髪の毛を移植する施術です。そのため、髪の毛が生えていない箇所の発毛も見込めます。

毛髪を生み出す細胞ごと移植するので、毛髪がすべて抜け落ちた箇所やけが・やけどなどの跡があり毛が生えなくなった箇所でも対応できるのが特徴です。

おでこの生え際に移植すれば、生まれつきの広い額も気にならないレベルにカバーできます。また、M字のように目立つヘアラインの形を整えたい場合にもおすすめです。

自身の髪の毛由来なので拒絶反応が起こりにくい

自毛植毛では自分の髪の毛を移植するため、人工毛植毛のように拒絶反応を起こしにくいのもメリットの一つです。術後の痛みや炎症が少なく、ダウンタイムを軽減できます。

当日の洗髪はNGですが、翌日からは普段通りの日常生活が送れるのも魅力です。

一方、投薬による薄毛治療では、体に何らかの影響が出るリスクがあります。そのため、継続して薬を服用することが心配な方もいるでしょう。

治療時の影響が気になる方にとって、拒絶反応を起こしにくい自毛植毛は選択肢の一つとなります。

生着後は元の髪の毛と同じようにヘアアレンジ・ケアを行える

生着後は元の髪の毛と同じようにヘアアレンジ・ケアを行えるのも、自毛植毛のメリットの一つです。

施術当日は洗髪できませんが、翌日からはいつも通りに洗髪して問題ありません。自身の髪の毛を移植しているため、洗髪後のドライヤーも可能です。

また、髪の毛が生着してしまえば、ヘアカラーやパーマによるおしゃれなヘアスタイルも楽しめます。好みのヘアスタイルにチャレンジできるので、自信を取り戻したい方におすすめです。

移植後のメンテナンス・通院が不要

一般的に投薬による薄毛治療では、服用や塗布をやめると症状が進行する可能性があります。

しかし、自毛植毛では移植後のメンテナンスや通院が不要です。一度施術を受ければメンテナンスや通院の必要がなく、効果の持続が期待できます。

他の薄毛治療と比べて手間がかからないのは、大きなメリットといえるでしょう。治療を継続する必要もなく、長期的な視点では治療にかかる費用を抑えられます。

植毛の必要性や効果が気になる方は専門家へ相談しよう

植毛の必要性や効果が気になる方は、まず毛髪の専門家に相談しましょう。

植毛のメリット・デメリットを把握しても、自分に植毛が必要かは一人だと正しく判断できません。そのため、専門家に相談して自分の頭皮や髪の毛の状態から、植毛の必要性を見極めてもらうのがおすすめです。

診断の結果、植毛が必要な場合は治療の効果や進め方を詳しく説明してくれます。どの程度の効果が見込めるかを説明してもらえば、安心して治療を進められるでしょう。

一人で悩んでいても薄毛は改善できないので、専門家に相談してみてください。

自毛植毛による薄毛治療を検討する上での注意点

自毛植毛による薄毛治療を検討する上で注意したいポイントを解説します。

• 術後3～4ヶ月で一時的な抜け毛・くせ毛が気になることがある
• 植毛後の生活習慣やヘアケア次第で薄毛が再発する可能性がある

施術後3～4ヶ月で一時的な抜け毛・くせ毛が気になることがある

自毛植毛では、施術後3～4ヶ月で一時的な抜け毛・くせ毛が気になることがあります。せっかく移植した髪の毛が抜けて、ショックを受ける方もいるでしょう。

この症状をショックロスと呼び、施術時の麻酔が原因と考えられています。麻酔の影響で移植した部分の髪の毛で毛周期がリセットされて起こるといわれていますが、原因は不明です。

ただし、ショックロスはあくまでも一時的な症状です。時間の経過によって脱毛やくせ毛は改善し、新しい髪の毛が生えてくるので安心してください。

植毛後の生活習慣やヘアケア次第で薄毛が再発する可能性がある

自毛植毛では植毛後の生活習慣やヘアケア次第で、薄毛が再発する可能性があるため注意してください。

健康な髪の毛を移植するため、簡単に抜けることはないでしょう。しかし、これまで通り薄毛につながる悪い習慣を続けていると、薄毛が再発する可能性があります。

そのため、以下のような習慣はすぐに改善するのがおすすめです。

• 睡眠不足が続いている
• 食生活に偏りがある
• 喫煙の習慣がある
• 洗髪の際に強い力でこすっている
• 洗髪後に十分に髪の毛を乾かしていない

これらの習慣を続けていると、植毛後に薄毛が再発する可能性があります。専門家と相談しながら、悪い習慣を改善するよう心がけましょう。

植毛の効果を着実に出したいなら早めの検討・施術がおすすめ

薄毛を改善したい方には、自毛植毛の施術がおすすめです。健康な髪の毛を移植するため、髪をカットしても再び生えてくるようになります。

ただし、自毛植毛は他の薄毛治療と比べて費用が高額です。外科手術を伴うため、ダウンタイムの痛みや傷跡が残る可能性もあります。

メリットだけでなくデメリットもあるので、自分に合う治療なのかを見極めることが大切です。

植毛の効果を高めたいなら、薄毛の症状が軽い段階で早期治療を始めるのがおすすめです。自分だけでは髪の毛や頭皮の状態を正しく判断しにくいため、まずは専門家に相談してみましょう。