季節の変わり目になって抜け毛が増えたと感じ、不安な方もいるのではないでしょうか。実は、季節の変わり目に抜け毛が増えるのは珍しい現象ではありません。

1日に抜ける髪の毛は約50〜100本とされますが、秋口などは抜け毛が150本から200本に増えるケースもあります。ただし、長期にわたり多くの抜け毛が見られる方は、季節の変わり目以外の原因で抜け毛が増えているのかもしれません。

本記事では、季節の変わり目に抜け毛が増える原因や対策について解説します。本文で紹介する対策に取り組めば、抜け毛の予防・改善が期待できます。すぐに取り組める対策ばかりなので、ぜひ参考にしてください。

季節の変わり目で増える抜け毛の本数の基準は

日本人の毛髪は約10万本とされており、1日に約50〜100本が抜け落ちては生え変わっています。季節の変わり目には抜け毛が増える傾向にあります。

特に秋口になると1日に150〜200本以上の髪の毛が抜け落ちることも珍しくありません。そのため、一時的な抜け毛量の増加であれば、過度に心配する必要はありません。

抜け毛が増えたタイミングが季節の変わり目なのか、もしくは100本以上の抜け毛が長期にわたり継続しているのかを注視すべきです。

季節の変わり目と関係なく100本以上の抜け毛が続いているなら、何らかの脱毛症を発症している可能性も疑われます。

参考：順天堂医学

【季節別】なぜ変わり目で抜け毛が増えるのかを解説

抜け毛はだれにでも見られる当たり前の生理現象の一種です。しかし、季節の変わり目に抜け毛が増えると心配になる方もいるでしょう。

季節の変わり目に抜け毛が増える主な理由は以下の通りです。

• 春｜ストレス
• 夏｜頭皮環境の悪化
• 秋｜夏に蓄積したダメージと夏バテ
• 冬｜乾燥と寒さによる血行不良

季節によっては上記の原因がいくつか絡み合った結果、抜け毛が増えるケースもあります。まずは抜け毛が増える理由を理解しておきましょう。

春｜ストレス

春は新生活が始まり、ストレスが溜まりやすい季節です。進学や就職に伴い地元を離れ、慣れない生活にストレスを感じる方も多いでしょう。

ストレス状態が続くとホルモンバランスが乱れ、抜け毛リスクが増加します。ストレスによる自律神経の乱れは、頭皮の血行不良を引き起こし、髪の毛の成長を阻害する原因の一つです。

また、春先は朝晩と日中で気温が大きく変化しますが、寒暖差も疲労やストレスが蓄積する原因となります。

花粉症の方も春の抜け毛に注意が必要です。花粉症など免疫系が過剰にはたらく方は、円形脱毛症の発症リスクが高いと考えられています。

夏｜頭皮環境が悪化しやすい環境が多い

気温が高くなる夏は、以下の要因で抜け毛リスクが増加すると考えられます。

要因	影響
汗	汗に含まれるアミノ酸やタンパク質をエサとして常在菌の一種であるマラセチアが増殖、脂漏性脱毛症の発症リスクが増加する
紫外線	紫外線の強力は破壊力により髪の毛や頭皮がダメージを負い、抜け毛リスクが増加する
冷房	冷房の冷えや外気との温度差により自律神経のバランスが乱れ、髪の毛の成長が阻害される

また、女性に比べると男性は皮脂の分泌量が多く、剥がれ落ちた角質と混じり合って毛穴に詰まりやすい傾向にあります。

皮脂と角質が混じり合って毛穴に詰まると、粃糠性（ひこうせい）脱毛症による抜け毛リスクが増加します。

参考 大正製薬

秋｜夏に蓄積したダメージと夏バテ

秋になると夏の間に受けた紫外線のダメージが現れ始め、頭皮環境が悪化して抜け毛リスクが増加します。また、秋は日中と朝晩の寒暖差が大きく、自律神経が乱れやすい季節の一つです。

自律神経が乱れると頭皮に送られる血液量が減少するため、健康な髪が育ちにくくなり、十分に成長しないうちに抜け落ちるリスクが増加します。

夏バテによる栄養不足も、抜け毛が増える原因の一つです。髪の毛は食事から摂取した栄養素によって作られます。

夏の間に食欲が減退すると髪の毛の成長に必要な栄養素が不足するため、秋になって抜け毛が増える結果となりかねません。

冬｜乾燥と寒さによる血行不良

冬の冷たく乾燥した空気は、抜け毛が増える原因の一つです。乾燥によって頭皮のバリア機能が低下すると、フケや炎症などが原因で頭皮環境が悪化して抜け毛リスクを高めます。

頭皮の乾燥は暖房によって引き起こされるケースもあります。暖房を入れると屋内の空気が乾燥しやすいため、加湿器などで対処するよう心がけてください。

冬の急激な温度変化も抜け毛リスクを増加させる原因の一つです。気温が急激に低下すると頭皮の血行不良が起こり、髪の毛に栄養が行き渡りにくくなります。髪の毛の栄養が不足すると、十分に成長しきらないうちに抜け落ちやすくなります。

季節の変わり目で増えた抜け毛はどれくらいの期間で回復する？

季節の変わり目で増えた抜け毛がどれくらいの期間で回復するのかに関しては、個人差があると答えるほかありません。

しかし、一般的には季節の変化に慣れる（ホルモンバランス・自律神経が落ち着く）タイミングで回復すると考えられます。

一般的には季節の変わり目から1ヶ月〜2ヶ月が経過すると、抜け毛量の増加が落ち着いてくる傾向にあります。

生理など女性特有の周期的なもので抜け毛が増える可能性もある

季節の変わり目以外にも、生理など女性特有の周期的な要因で抜け毛が増える可能性もあります。

代表的な女性ホルモンとしてエストロゲンとプロゲステロンが知られており、それぞれ髪の毛に関して以下の作用をもたらします。

• エストロゲン…髪の毛にハリやコシを与える
• プロゲステロン…髪の毛の成長期を維持する

妊娠中の女性が髪の毛のボリュームアップを実感する傾向にあるのは、妊娠状態を維持する目的で女性ホルモンの分泌量が増加するためです。しかし、出産に伴い女性ホルモンの分泌量が減少すると抜け毛が増え、分娩後脱毛症の発症リスクも増加します。

更年期に入ると女性ホルモンの分泌量が減少するため、FAGA（女性男性型脱毛症）を発症しやすくなります。FAGAは中高年以降の女性に多く見られる髪の毛の悩みの一つです。

また、生理前後も女性ホルモンのバランスが変化するため、抜け毛が増える可能性があります。

参考 女性ホルモンとライフステージ

【要確認】季節の変わり目による抜け毛か薄毛の進行かを見極めよう

抜け毛の増加が気になる方は、原因が季節の変わり目なのか、それ以外の原因によるのか見極めることが大切です。季節の変わり目以外の原因で抜け毛が増えている場合、何らかの脱毛症を発症している可能性があります。

季節の変わり目に抜け毛が増えてきた方は、以下の3項目をチェックしてみてください。

• 以前と比べて増えた抜け毛が1ヶ月以上続いていないか
• 抜けた髪の毛根が膨らみ（毛根鞘）を帯びているか
• 毛が抜ける箇所が一部分に限定されていないか

以前と比べて増えた抜け毛が1ヶ月以上続いていないか

一般的に1日の抜け毛は50〜100本とされますが、季節の変わり目には本数が2〜3倍に増えることがあります。そのため、一時的な抜け毛量の増加であれば過度に心配する必要はありません。

しかし、抜け毛の増加が1ヶ月以上にわたり続くなら、何らかの脱毛症を発症している可能性があります。脱毛症を発症している場合は一時的に抜け毛が増えるのではなく、継続的に抜け毛の本数が増え続けるため注意が必要です。

抜け毛の大半はシャンプーの際に起こるため、排水管に詰まる髪の毛の量が以前と比べて増えていないかチェックしてみましょう。

抜けた髪の毛根が膨らみ（毛根鞘）を帯びているか

抜け毛量の増加が気になる方は、抜け落ちた髪の毛の根元部分をチェックしてください。抜け毛の根元が膨らみを帯びているなら、正常なヘアサイクルを終えて抜けた髪の毛と考えられます。

抜け毛の根元に付着した半透明のゼリー状の膨らみは毛根鞘（もうこんしょう）と言い、髪の毛と毛穴とを結びつけるはたらきがあります。ヘアサイクルの終わりを迎えると、髪の毛は毛根鞘ごと抜け落ちるのが一般的です。

抜け毛の根元に毛根鞘が付着していない場合、脱毛症を発症してヘアサイクルが短くなっている可能性があります。抜け毛が一本の棒のように真っすぐな方は注意が必要です。

毛が抜ける箇所が一部分に限定されていないか

日本人の毛髪は約10万本ですが、髪の毛1本1本につきヘアサイクルが異なるため、髪の毛が1日に100本抜けたとしても、直ちに抜け毛跡が目立つことはありません。

しかし、毛が抜ける箇所が一部分に限定されている方は、何らかの脱毛症を発症している可能性があります。例えばAGA（男性型脱毛症）を発症すると、頭頂部や前頭部など部分的にはげが進行します。

また、円形脱毛症を発症すると、まとまった量の髪の毛が一ヶ所から抜け落ちがちです。牽引性脱毛症の場合も、局所の薄毛を引き起こすのが特徴です。

ただし、びまん性脱毛症の場合は全体的に抜け毛が起こります。抜け毛の箇所が一部分に限定されていなくても、髪の毛全体のボリュームが減少しているなら注意が必要です。

脱毛症や薄毛の進行が疑われるなら専門家へ早めに相談

抜け毛量の増加が長期にわたり続くなど、脱毛症や薄毛の進行が疑われるなら、毛髪診断士などの専門家に早めに相談しましょう。主な脱毛症としては以下の例が挙げられます。

脱毛症	特徴
AGA（男性型脱毛症）	額の生え際やつむじまわりから薄毛が進行する
脂漏性脱毛症	黄色っぽくて粒が大きいベタベタとしたフケが増え、抜け毛量が増加する
粃糠性脱毛症	白っぽくて粒が小さいフケが毛穴に詰まり、炎症を起こして抜け毛が増える
FAGA（女性男性型脱毛症）	女性ホルモンの分泌量が減少して抜け毛が起こりやすくなる
びまん性脱毛症	髪の毛全体のボリュームが減少して地肌が見えやすくなる
牽引性脱毛症	局所の血行不良により抜け毛が起こりやすくなる

参考

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン

日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン

季節の変わり目に備えた抜け毛対策をそれぞれ紹介

季節の変わり目には抜け毛が増加する傾向にありますが、以下の対策で抜け毛量の増加を抑えましょう。

• 春は適度なストレス解消の習慣をつける
• 夏はとにかく頭皮を清潔に保つ
• 秋は入念な頭皮ケアと手軽な栄養補給で対応する
• 冬は保湿と寒さ対策を万全に行う

ここでは、春・夏・秋・冬に分けて、抜け毛対策について解説します。

春は適度なストレス解消の習慣をつけよう

ストレスが溜まりやすい春には、ストレス解消の習慣を持つことが大事です。軽い運動や十分な睡眠などの健康法や、趣味に没頭するなどの方法もOKです。

ストレスの解消になるからといって、暴飲暴食など健康を害する方法は避けてください。春は環境の変化により、忙しくて時間が取れない方も増えます。そのため、自宅や近隣でできる死とレス解消法がおすすめです。

夏はとにかく頭皮を清潔に保とう

夏は頭皮の蒸れや紫外線によるダメージ、冷房の風によるなど頭皮環境が荒れやすいため、とにかく清潔にするよう意識してください。

シャンプーやドライヤーなど、正しいヘアケアのやり方を覚えて実践する必要があります。ただし、頭皮を清潔に保とうとするあまり、1日に何度もシャンプーするのは避けてください。

何度もシャンプーすると頭皮を守るべき皮脂が失われ、かえって頭皮の乾燥や炎症などを起こしやすくなります。また、外出の際には日傘や帽子などを着用して、紫外線から頭皮を守ってください。

秋は入念な頭皮ケアと手軽な栄養補給で対応しよう

秋になったら夏のダメージを補修するための適切なシャンプー・トリートメントを選び、頭皮ケアを励行してください。

夏バテによる栄養不足（食欲不振）も懸念されるため、十分な栄養が摂れるサッパリとしたレシピを調べたり、サプリ・プロテインなどの健康補助食品を活用したりしましょう。

摂取して欲しい栄養素と食べ物の例は以下の通りです。

栄養素	食べ物例
タンパク質	鶏のささみやむね肉を使ったバンバンジー
ミネラル（亜鉛）	アボカドのサラダ
ビタミンA	にんじんしりしり
ビタミンC	赤パプリカと春雨の中華炒め

参考 栄養に関する基礎知識｜国立循環器病研究センター

冬は保湿と寒さ対策を万全にしよう

冬は気温が下がって血行が悪くなりやすいため、適度な運動や頭皮マッサージ、育毛剤の使用などで血行を促進するよう意識しましょう。

頭皮や髪の毛はシャンプー・トリートメントなどで入念にケアし、専用のローションなどで保湿するのがおすすめです。

また、冬場は空気が乾燥しやすいので、加湿器を利用して部屋の湿度を40〜50％程度に保ちましょう。

季節の変わり目に向け対策して抜け毛の不安を解消しよう

季節の変わり目には抜け毛が増える傾向にありますが、春・夏・秋・冬それぞれに要因が異なります。そのため、季節に応じた適切な抜け毛対策を知る必要があります。

抜け毛の増加は主に頭皮環境の悪化により起こる傾向にあります。普段から適度な運動や栄養バランスのとれた食事を意識した上で十分な睡眠を確保し、心身にストレスをため込まないよう気を付けてください。

1ヶ月以上にわたり継続的な抜け毛量の増加が見られる方や、セルフケアでは症状改善の兆しが見えない方は、毛髪診断士などの専門家に相談するのがおすすめです。

仮にAGAを始めとする脱毛症を発症している場合、適切な処置を怠ると薄毛が徐々に、かつ確実に進行するため注意が必要です。季節の変わり目に向け本文で紹介した対策を行い、抜け毛の不安を解消しましょう。